仕事を終えて帰路につく途中、ふと道端を見ると、牛が1頭、脱柵していました。

湯の丸高原では、毎年レンゲツツジの開花に合わせて、牛の観光放牧が行われています。
急いで湯の丸高原ホテルに牛の脱柵を伝えに行きました。

「牛が1頭脱柵しているんですが」
 「場所はどのあたりですか」
「九十番観音の少し上です」
 「民宿わたらせの近くですね。わたらせの鴇沢さんに応援を頼みましょう」

湯の丸高原ホテルの従業員を現場へ案内すると、すでに鴇沢さんが到着していました。

 「車との接触事故が心配だね」
「鴇沢さん、どうしますか」
  「牧柵の有刺鉄線を切って中へ入れるしかないな」

脱柵した牛
脱柵した牛

 「霧が濃くなってきた。急がないと」
「準備ができたら合図をください。追い込みますから」
  「待って。今、入れやすいところを探しているから・・・」

鴇沢さんがワイヤーカッターで有刺鉄線を切り始めたとき、 それまでおとなしくしていた牛が突然向きを変えて、背後にある柵を乗り越えようとし始めました。

 「あっ、そっちじゃない!」

見る間に牛の前足が柵を乗り越えていきました。

「大変だ!有刺鉄線が牛のおなかに!」

そのとき、柵の杭の1本が横に倒れて、牛は無事、放牧区へと戻っていきました。

「ふぅ。やれやれ」
 「この杭、根本がぐらぐらじゃないか」
  「うん。打ち直しておこう。その前に、切った鉄線をつながないと・・・」

こうして、発見から20分で、牛を柵の中へ戻すことができた(?)のでした。

(F)