目次

第4部 自然へのおそれ

山の噴火、地震、津波、台風による土砂崩れや河川の氾濫はんらん、豪雪。
世界全体に占める日本の自然災害の発生割合は、マグニチュード6以上の地震回数20.8%、活火山数7.0%、死者数0.4%、災害被害額18.3%など、世界の0.25%の国土面積に比して非常に高くなっている(内閣府)。
日本の国土は自然災害が発生しやすいと言える。

その一方で、日本の年間降水量は1700mm(世界平均の約2倍)、国土に占める森林面積の割合は67%(世界平均の約2.3倍)で、水と緑に恵まれた国でもある。

自然災害の多さは、そのまま自然環境の豊かさの表れのようにも見える。

「三陸沿岸は、明治、昭和、平成と120年の間に3回の大津波に見舞われ、そのたびにまちを復興してきました。はたから見ると、なぜそんな危ないところに人が住み続けているのか、非常にわかりにくいと思うんです」

と話すのは浅間山ジオパーク構想推進協議会事務局の宮崎さん。

「ですが、三陸沖には豊かな漁場が広がり、そこに暮らす人々に大きな海の恵みをももたらしてきました。その土地に暮らす人々には、その土地の自然への思いがある。 歴史的に大規模噴火を繰り返してきた浅間山の間近で暮らす私たちにも、それとまったく同じことが言えます」

浅間山北麓ジオパーク構想推進の取り組みを続けていく中で、火山とともに生きる知恵や教訓、そして火山がもたらす恵みを、地域の内外へわかりやすく発信できればと考えている。

ジオツアー(浅間山北麓ジオパーク構想)

日本人は古来より、山に向かって祈り、巨木をまつり、四季の変化を歌に詠んできた。
自然がもたらす災害と恵みは、人に自然に対するおそれと感謝の念を抱かせ、 それが人々の自然に対する繊細で豊かな感性と文化を育んだ。

自然の中にある多面性に目を向け、それらを受け入れようと努力するところに、人と自然がともに生きる本当の豊かさがある――

もしかすると自然は、そんなことを私たちに語りかけているのかもしれない。

(F)