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湯の丸高原北面に、メスのニホンジカの群れが姿を現しました。

湯の丸高原に現れたニホンジカの群れ
湯の丸高原に現れたニホンジカの群れ

ニホンジカは1980年代以降から数が増え、これに伴い各地で農林業への被害や、自然の植生が大きく変わってしまうなどの影響が見られるようになりました。

こうしたことから、

「このままではシカが増えすぎて、生態系のバランスが崩れてしまうのではないか」

と考えられるようになり、現在、駆除や防護柵の設置などの対策が進められています。

湯の丸高原に現れたニホンジカの群れ(2)

そんなニホンジカですが、明治の終わりから1960~70年代にかけて個体数が激減し、捕獲が制限された時代もありました。

シカの狩猟規制の歴史
1878年
(明治11)
エゾシカ猟の一部規制。
1890年
(明治23)
エゾシカ猟の全面禁猟。
1892年
(明治25)
「狩猟規則」制定とともに1歳以下のシカの捕獲禁止措置がとられる。
1901年
(明治34)
「狩猟法」の改正を受けシカの禁猟が解除される。
1918年
(大正7)
「狩猟法」の改正にともない狩猟獣に指定される。これ以降、基本的には戦後まで狩猟獣として捕獲され続け、各地の個体数は減少。
1948年
(昭和23)
メスジカが狩猟獣から除外される。
1950年
(昭和25)
オスジカのみが狩猟獣とされる。しかし、生息数は各地で減少、各地で 捕獲禁止の措置がとり続けられた。
1978年~
(昭和53~)
環境庁はオスジカの捕獲数を1日1頭に制限。保護政策は、暖冬の継続などの影響も加わり、次第に効果を発揮。
1980年~
(昭和55~)
各地の個体群の状況は大きく変わり、個体数が増加。農林業被害や自然植生への影響が深刻化。
1994年
(平成6)
一定の条件のもとで「メスジカ狩猟獣化」を許可。
1998年
(平成10)
シカを含む毛皮獣の狩猟期間短縮措置を廃止。北海道では捕獲数制限を1日1頭から2頭に変更。
2006年
(平成18)
休猟区であってもシカ・イノシシなどの狩猟が可能となる「特例休猟区制度」の創設や、網・わな免許の分割が行われる。
環境省 特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編・平成27年度)

シカの個体数は、1960~70年代に比べると大きく増えています。
その原因については、

  • オオカミの絶滅
  • 野犬・犬の放し飼いの減少
  • 温暖化による降雪の減少
  • 狩猟者の減少

などが考えられてきました。

ところが、シカの個体数は明治初期から比べると、その当時の数にまで回復してきたと見ることもできます。
現代に比べ、オオカミや野犬、降雪や狩猟者が多い時代にも、シカはたくさん生息していました。

シカ個体数の変動模式図

北海道大学の揚妻直樹准教授は、近年におけるシカ個体群の変動と農林業被害の急増は、人間による土地利用が時代とともに変わってきたことが大きく関わっていると指摘しています。

「戦後まもなくまで、日本各地の平地・丘陵地には意外にもしっかりとした森林が少なく、草地・荒地と呼ばれる無立木地や疎林が広がっていたことがわかっている。
こうした植生は、人間が採草地・牧畑・緑肥や落葉採集地・薪炭林として利用していたために成立していたと考えられる」

拡大造林期前の環境構造

「集落周辺には特にそうした無立木地や痩せた土地に生えるマツ類などの疎林が広がり、野生動物にとって資源が乏しく、そのために個体数が抑制されていた可能性がある。
しかし、戦後しばらくすると集落周辺の環境は激変した。
1960年代の燃料革命によって薪炭利用が著しく減少し、また化学肥料の普及で緑肥や落葉が採集されなくなった。
さらに国全体の産業構造が変化して、農業人口・農地面積は減少していった。
そのため無立木地や疎林、放棄された田畑では植生遷移が進行し、広葉樹林が発達していった。
つまり、集落周辺に野生動物にとって良好な生息地が増えていったのだ。
そして、良好な生息地が農地に隣接していることで、野生動物が恒常的に農業被害を起こすようになったと考えられる」

現在の環境構造

「かつて山中には広葉樹が多く残されており、動物個体群を支えていた。
しかし、1960-70年代の拡大造林事業により、大規模な自然林皆伐と針葉樹植林地化が全国的に進行した」

「針葉樹林は食物生産という面ではシカにとってマイナス要因かもしれないが、積雪が多い地域では雪からの避難所になるというプラス面がある。
一般に針葉樹林の中は積雪量が少ないからだ。
そうした針葉樹林の配置の変化がシカの増加や被害に関係している場合もあろう」

シカの異常増加を考える 揚妻 直樹 2013

  • 図は資料を元に鹿沢インフォメーションセンターが作成。

こうしたことから見えてくるのは、シカは人間との関わりの中で、個体数を大きく変動させてきた、ということです。

現在、シカが増加したことで、私たちのくらしや自然生態系に様ざまな影響がおよんでいる以上、シカの駆除もやむを得ないことでしょう。
けれども、シカの食物資源が十分にある環境下では、高い駆除圧をかけても個体数はすぐに回復してしまい、意図した効果を上げるのは難しいかもしれません。

シカの増加が環境適応の結果であるならば、何に適応した結果なのか、その原因にも目を向けながら対策を進めていくことが大切ではないでしょうか。

(F)

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